ワールドカップ特別インタビュー【第四弾】
日本サッカー界のパイオニア奥寺康彦が語るW杯と、初戦ドイツ代表との戦い方とは!?



今までのワールドカップで印象に残っている大会や選手はいますか?

 

94年のアメリカ大会が物心ついてから一番最初に見た大会ですね。

93年にJリーグが開幕し、そこから見ていてちょうど94年アメリカ大会のロマーリオ(元ブラジル代表)とべべ(元ブラジル代表)の2トップを見てバッジョ(元イタリア代表)を見るという感じでした。バッジョのPKを外したのを見て、”どれだけすごい選手でもPKを外すんだな”と思いバッジョのPKが凄い印象に残っています。

 

あとは、98年フランス大会もジダン(元フランス代表)の大会というか初めてフランス代表の試合を見てすごい強いと思いましたし、ボバン(元クロアチア代表)とかコアな選手やポジションを見るのが好きでした。

特に、クロアチア代表の2トップが凄くて面白かったと思いました。

当時、松井さんはどこのポジションをやっていましたか?

トップ下をやっていてそれこそボバンなど真ん中の選手を見るのが凄く好きでした。ジダンもそうですしオルテガ(元アルゼンチン代表)とバティストゥータ(元アルゼンチン代表)とか前線の選手を見るのが好きでした。

そのころからプレースタイルとしてドリブルは得意でしたか?

ドリブルというかボールをずっと持ちたいという気持ちが強かったです。11人いますけどその中でボールを持てる人は1人なので時間がある限りボールを持っていたかったんでしょうね。(笑) それでドリブルが好きになったというのもあると思います。

プロになられてから02年日韓ワールドカップが開催してどうでしたか?

日韓はすごかったですね。日本開催されるということで街はお祭り騒ぎですし、自分たちの2個上ぐらいの選手たちがワールドカップに出ていたので近いようで遠い存在でした。

その時は京都(京都サンガF.C.:当時は京都パープルサンガ)でパク・チソン選手が日韓ワールドカップに出場しましたよね?

パク・チソンが日韓に出場してベスト4まで行きましたからね。いろいろありましたけど、結果的にベスト4というすごい成績を残しているのですごいですね。

06年ドイツ大会はフランスに移籍していますよね?

そうですね。06年ドイツ大会の時はジーコ(当時 日本代表監督)も試合を見に来ていて、ル・マン(ル・マンFC)対サンテッチェ(ASサンテティエンヌ)の試合ですごく悪い試合で全然活躍できなかったので選ばれなかったんだろうなと思いました。

試合終わりにパリに帰るのにジーコと帰りが一緒だったんですけど、会話もなくあんまりよくなかったんだなと思っていましたね。まあしょうがないですけどね。


ワールドカップの代表メンバーに選ばれるために大事にしていたことはありますか?​ 
 

06年ドイツ大会に出られなかったことで10年南アフリカ大会は絶対に出たいという思いがありました。試合もそうですけど岡田監督(岡田武史)が「所属チームで試合に出ている選手しか選ばない」と言っていたので移籍したり、そのチームでしっかり試合に出たりとか、ワールドカップ予選など大事な時は“試合でしっかり結果を残す”ということは意識していました。

直前で岡田監督になりシステムが変わり、プレースタイルやチームから求められることは変わりましたか?

変わりましたね。今までやってきたものは全てなくしてじゃないですけど、オールコートでディフェンスしていたのもしっかりブロックを組みながらハーフラインの手前ぐらいから行くなど、一番大きかったのはアンカー・ボランチを置いたのが大きかったです。

両サイドの上下運動が印象的ですが、松井さんの中であのシステムはどう感じていましたか?

元々走れる人を選考していたみたいで、標高2000mとか1800mぐらいの高地で戦う試合だったので空気が薄い、高山病になりやすいなどに適応するためにスイスに行ったり監督が掲げていたことが「全コートプレス」だったので、そういう意味では“一人が相手より多く走ること”が大事でした。選ばれた人たちは必然的に走れないといけないとなったときに、僕は鹿実(鹿児島実業高等学校)だし走るのは当たり前だったから、それで選ばれたのかもしれないけど、そこが生命線だったのもわかる気がします。自分もワールドカップに出たいって思ってきた4年の思いがあるので、自分の中では夢の大会だからそこで終わってもいいという想いで1試合目はいきましたね。

準備期間がなかったと思いますが、あの中でどれぐらい練習できましたか?

1週間ぐらいです。最後にジンバブエと練習試合して岡田監督が言っていましたけどそこでメンバーを決めたみたいです。

僕はもう試合に出たい、出るためにやっていました。

今大会も準備期間が取れない中でどのように影響すると思いますか?

どのチームも一緒で選考まで公式戦もないと思うので、今まで公式戦や練習試合でやってきたことがぶっつけ本番になると思うので、戦術的なとこで日本の場合は少し固まったものがあるので活かせるとは思います。でも他の国はそういう固まったものがなく個々の能力でしか戦えないので個々の能力が高いチームが勝つんじゃないかなと思います。

波乱は起こると思いますか?

ぶっつけ本番なので本当に調子が良いチームや勢いがあるチームが勝つと思います。リーグ戦みたいにずっと戦っていく試合じゃないので初戦を勝ったチームが波に乗ってベスト16やベスト8に上がってくると思います。



大会期間中、オフなど選手間でのコミュニケーションはどのような感じですか?

 

ホテルに監禁なので、ホテルに何でもあるのでそこで過ごす感じですね。自分たちのところは広い敷地にゴルフ場もありましたし、テニスとかゲームもビリアードも卓球もあって娯楽は全て揃っていたと思います。

噂によると大久保さん(大久保嘉人)と釣りをやりに行ったとか?

行きましたね。何も釣れなかったです。(笑) その時はプライベートでゴルフをやっていなかったので今思えばゴルフをやっておけば良かったなと思います。

その他にみんなでやっていたことはありましたか?

当時流行っていたWiiのマリオカートをみんなでやっていたのは覚えています。

みんなゲーム好きだったのでリラックス部屋みたいな所でみんな集まってやりました。

誰と一緒にいることが多かったですか?

こま(駒野友一:FC今治)、あべちゃん(阿部勇樹)、たま(玉田圭司)の3人が多かったですけど、その他にもよしと(大久保嘉人)とかえいじ(川島永嗣:RCストラスブール)ですね。

もう、こま・あべちゃんは同年代で長いですからね。

試合の後、選手同士で話し合ったりしましたか?

あまりなかったですね。みんなリカバリーなど、部屋でずっと何かやっていることがみんな多いですよ。

みんなファンの人が送ってきてくれたDVDを見ていたり、雑誌を見ていましたね。

ファンがホテルに送ってくれるんですか?

ホテルっていうより日本で貰ったものを全部持ってくるという感じですね。暇グッズは全部持っていきます。(笑)

ある一定のファンの方はチームに大量のDVDを毎回送ってくれたりとか記者の方は雑誌を持ってきてくれたりとかですね。今はiPadがあればなんでも繋がるからいいけど、昔は電話するのも国際電話ですごいお金かかるからね。その時はLINEがなかったからスカイプしか使ってなかったです。

呼んでみてほしい選手はいますか?

オーストリアですごく活躍している子(中村敬斗:LASKリンツ)がいて呼んでみたらいいんじゃないかなと思います。せめて参考には入っていてもいいと思いますね。一回も選ばれてないから難しいとは思いますけど、森保監督は固いから新しい選手は選ばないかもしれないですね。



三笘選手(三笘薫:ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFC)推しでも話題ですよね?

 

もう最初からずっと言っていますからね。乾(乾貴士:清水エスパルス)の時もずっと言っていたら活躍しました。(笑)

だから今回も活躍するし点も取ると思います。ワールドカップで点を取るとまた一段階上がってくるので上がってくれることを願います。

三笘選手は海外に行っても川崎フロンターレにいたときの抜き方をやれていてすごいと感じるのですが、松井さんもそうでしたよね?

それしかなかったですからね。相手が変わるだけで、日本の選手と海外の選手は違いますけど各国の代表に入っている人たちと対峙するのでまた違う発見ができ、レベルアップをすることができると思うので日本でやっているより海外に行って体験した方がいいなと思います。ヨーロッパなどに行けばいろんな人がいるのでその場に行き成長することで自分のスキルが上がると思います。

最後に日本代表の予想をお願いいたします。

グループリーグ突破したら凄いことだからベスト8とかいっちゃうかもしれないですね。本当に突破したら今回のワールドカップは明るいワールドカップになると思います。

ドイツとスペインだったらどっちがいいですか?

所属チームがヨーロッパの選手が多いのでその点慣れているのでヨーロッパとやるのはいいけど、レベルが高くて困っていますね。でもよりによってこの2チームか、と固く崩れない2チームですからね。スペインも素晴らしいサッカーをしますしそことできるのもやっぱり面白いし、僕もオランダとやったときにどれだけ追いかけてもボールは取れなかったですね。今とは時代が違いますし、日本人選手のレベルが上がっていますし、今と昔では違うので対等に戦うとは思います。チャンスはあると思いましそこを決めるか決めないかですね。

ありがとうございました。