ワールドカップ特別インタビュー【第四弾】
日本サッカー界のパイオニア奥寺康彦が語るW杯と、初戦ドイツ代表との戦い方とは!?

今までのワールドカップを振り返りながら自身の思い出や歴代名場面について株式会社1009(Claudio Pandiani)とサプライヤー契約を結ぶ方々にお話ししていただきました。
今回は世界を知る奥寺康彦さんです。
◇奥寺康彦(おくでら・やすひこ)
1952年3月12日生まれ。秋田県鹿角市出身。湘南工科大学附属高等学校卒業後、日本サッカーリーグ古河電気工業サッカー部に入部。ブラジル・パルメイラスに留学をきっかけに急成長し日本代表に選出。その後は得点王・天皇杯優勝・ベストイレブンに選出など様々な功績を残し1977年10月にドイツの1.FCケルンに入団。中心選手として活躍し、ブンデスリーガ優勝とDFBポカールで優勝した最初の日本人となる。その後、ヘルタ・ベルリン、ブレーメンを経て古河電工に戻ってきて1988年シーズンを最後に現役引退。
現在は横浜FC代表理事兼、シニアアドバイザーを務めている。



これまでのワールドカップでの思い出やエピソードをお聞かせください。


78年アルゼンチン大会は僕がドイツに移籍した次の年に開催され、僕の仲間もケルンから代表に選ばれていました。 アルゼンチン大会と同時期に日本でジャパンカップが開催されていたので、僕は日本に帰ってきていました。 僕が在籍していたケルンも日本で試合をしました。

そこで、日本代表と試合をされたのですか?

代表ともやりましたし、イングランドのコヴェントリー(コヴェントリー・シティFC)とメンヘングラードバッハ(ボルシア・メンッヒェングラートバッハ)など数チームが日本に来て、優勝はできませんでしたが試合をしました。三ツ沢では、当時日本リーグで1位だった日本鋼管とも試合をしました。

アルゼンチン大会は、マリオ・ケンペスがすごく活躍していた印象がありますね。
彼は髪をなびかせながら突破していき、利き足の左足からシュートを放つという場面が多く、そのプレーにはもちろん、地元開催ということですごく盛り上がっていました。

奥寺さんの中で、西ドイツに思い入れがあって応援しているみたいな感じはありましたか?

ありました。 僕はドイツでプレーしているし、チームメイトも行っているので、思い入れは強かったですね。 そういう試合で頑張っている姿はすごく印象に残っています。

チームメイトや近い人がワールドカップに行っていたんですね。

ドイツはいつもなんだかんだ言って勝ち上がっていたので、よくみんな“ゲルマン魂”だって言っていましたね。
ただ、向こうの選手に聞いても“ゲルマン魂”なんて言葉はなく、日本人が作った言葉でした。
最後の最後まで戦う姿勢があって、勝ち越されても同点に追いついて、逆転するとかそういう試合を見て、”底力があって最後まで諦めないこと”をゲルマン魂と命名したんじゃないかなと思いますね。
その団結力には、闘将がいるわけですよ。中心となって引っ張る力がある選手が常にいたというのが、最後まで諦めずに戦えたという一つの要因かもしれないですね。

82年スペイン大会で中心になったロッシ(パオロ・ロッシ)も印象深いですね。

スペイン大会の得点王ですもんね。

ロッシは決勝トーナメントに入ってから得点を取り始めた気がします。
裏から出たり、こぼれたボールとかペナルティーエリア内での得点嗅覚は秀でていました。
大会で得点王になる人はそういう人だと思います。
“よくゾーンに入る“という言い方をしますが、ストライカーは1点取ると、その感覚を覚えて得点を重ねていきますからね。

奥寺さんは"ゾーンに入る"を経験したことはありますか?

ゾーンという言い方はおかしいかもしれないですけど、ブレーメンに行ってからケガもしなかったし、60試合くらいはフル出場しました。

試合数がすごいですね。

すごくチームにも馴染みましたし、フェラー(ルディ・フェラー)はいたけど、飛び抜けた選手は少なかったし、その中で信頼してもらってずっと使ってもらえたというのは自分にとってすごく信頼されていたんだなと思います。
ポジション的には、サイド、フロント、ストッパーなどいろいろなところで起用していただき、それも自分の価値を認めてくれて、信頼して様々なポジションに配置したんだろうと思います。
その時が30から33歳ぐらいですけど1番乗っていました。
86年メキシコ大会は、西ドイツが最後アルゼンチンにやられますけど、あの大会はもうマラドーナでしたね(笑)

有名な神の手や5人抜きですね?

あれだけのプレーを見せて、レフリーは神の手が見えなかったんでしょうね。
だからあのようなことも起こるし、マラドーナは非常にジャンプ力もあったから、頭だと思ってジャッジミスをしたと思います。

他に印象深かったチーム、選手はいましたか?

70年大会のブラジルの選手たちは、ペレ、ジャイルジーニョ、ジェルソンなど錚々たるメンバーがいました。
優勝するようなチーム、特にブラジルは本当にバラエティーに富んだ選手が多かったのが印象的です。
全部個性が違うのに一つにまとまったのはペレがいたからかもしれないけど、それは見ていて楽しかったです。

ドイツのサッカーとブラジルのサッカーは全然違いますか?

全然違いますね。
ブラジルはテクニカルな個人技がメインで、そのなかで“意外性のあるパスを出す”など、“意外なこと”がブラジルのサッカーの特徴です。
でもドイツは分かりやすくて、スピードとかコンビネーションで崩して、速い選手が突破してくるので、見ていても“こうしてくる”という形がわかりやすいですね。
“突破してくる”とか”クロスが上がる”など、すごくシンプルでわかりやすいオーソドックスなサッカーをしていました。
もちろんその中に意外性のあるドリブラーがいますが、全体的にはすごくオーソドックスなプレーだったと思います。



今のブラジルとドイツ、当時の西ドイツとブラジルは違いますか?


今は世界的にプレースタイルが同じになってきていますね。
もちろんそのなかにブラジルなどテクニックがある選手がいるかもしれないけど、サッカーのスタイルとしては繋いでくるし、展開もあるし、やり方は同じになってきているように感じます。
そこにパリ・サンジェルマンのネイマールみたいな選手がいて絡んでくるので、ゴール前にはそういう違いがあると思います。
ですので、ゲームを作る時には繋ぐけど、最後のバイタルエリアに入った時に個性が出てくる感じだと思います。
今はほとんどブラジルや南米の選手がヨーロッパに来ていますし、昔のような細かい動きから、ワンツーというプレーが減ってきていますね。
ただ、ここという時に相手をかわしてシュートというのはネイマールをはじめ南米の選手だと思いますね。
今、スペインとかイタリアにはそういう南米的な選手は出てきていますが、西側の方は少ないと思います。



日本がドイツに勝つにはどうしたらいいと思いますか?


ドイツはサイドからの攻撃が得意ですが、ディフェンスラインが揃った時にはすごく難しいと思います。
速く攻めて、クロスに入っていく形が理想かもしれませんが、相手ディフェンスが引いて守った時にスピードを上げて攻められないのでどのように戦うのか楽しみですね。
日本も引きすぎることはないけど、攻めてボールを取られてしまった時は速攻されますが、その時はしっかりポジションまで戻ってブロックして待ち受けるのも手かもしれませんね。
あまりゴール前にいるとボールを上げられて、セカンドボールから入れられたりするので、ペナルティエリアのラインまでは20メートルぐらいの間隔でいることだと思います。 そうすると今度は裏のスペースを狙って来るので、いかにサイドの裏を使わせないようにするかが大事だと思います。
サイドはキーパーも出てこられないし、スペースがあるので最近の試合は縦に走ってサイドからボールが出て来ることが多いですからね。
相手もそれをやってくると思いますが、日本が攻められていて耐えている時は相手が出てくるからチャンスで、ボールを取ったら足の速い二人ぐらいで速攻で点を取ることは狙い目だと思います。

日本代表でポイントになる選手は誰だと思いますか?

足の速い選手でサイドだと伊東(伊東純也:スタッド・ランス)選手ですね。

ドリブルだと久保選手(久保建英:レアル・ソシエダ)なども?

上手いけど、彼のプレースタイルだと周りとどう合わせるかが重要になってくると思います。
堂安(堂安律:FCフライブルク)選手もスピードがあって良いと思います。
あと、三笘(三笘薫:ブライトン)選手は独特のスピードで行くからディフェンスを一気に離すので押し込んだ時に効くと思います。



今大会、日本に限らず期待したい選手はいますか?


スペイン代表のペドリ(ペドロ・ゴンサレス・ロペス:FCバルセロナ)ですね。
彼はイニエスタ(アンドレス・イニエスタ:ヴィッセル神戸)に匹敵するぐらいのプレーをしますし本当にうまいと思います。

そんなペドリ選手がいるスペインと日本は対戦しますが、どうするでしょうか?

正直なところスペインとやったら結構やられちゃうんじゃないかなと思いますね。

ドイツとスペインだったらどちらにチャンスがあると思いますか?

ドイツは分かりやすいプレーが多いのでチャンスはあると思います。
スペインは意外性のある選手がいますし、ペドリみたいなプレイヤーもいるのでドイツの方がチャンスがあるかもしれないですね。
初戦だから先のことは考えず、”まず負けない”という戦い方をしていかないといけないと思います。
全く引く必要はないと思いますし、ドイツでやっている選手も多くドイツの選手のこともよく知っていると思うので物応じはしないと思いますけどね。

そこはドイツと戦う上で強みになりますね。

戦い方を知っていることは大きいと思います。
対等までいかなくても”やれる”という意識が選手はあると思います。

とても楽しみですね。

本当に楽しみです。
今回はみんなで練習する時間が少ないって言いますし、インターナショナルマッチデーがあってもシーズン途中なのでみんな疲れていて、まずは疲れを取るために時間を費やすと思います。
なかには、準備している国が強豪国の”足をすくう”かもしれないと言い方をする人もいて、それは充分あり得ることだと思うので、今大会は何が起こるかわからないという楽しみもあります。

ありがとうございました。