ワールドカップ特別インタビュー【第五弾】
元チームメイトが語る、日本を背負うものにしか味わえない瞬間!

今までのワールドカップを振り返りながら自身の思い出や歴代名場面について株式会社1009(Claudio Pandiani)とサプライヤー契約を結ぶ方々にお話ししていただきました。 今回は世界を知る武岡優斗さんです。
◇武岡優斗(たけおか・ゆうと)
1986年6月24日生まれ。京都府京都市出身。
国士館大学の4年時には主将を務め、天皇杯では鹿島アントラーズを相手に善戦した。2009年にサガン鳥栖に入団しプロの道へ進む。その後、横浜FC、川崎フロンターレ、ヴァンフォーレ甲府を経て2020年レノファ山口に加入。2020年シーズンを持って現役引退を発表。
現在は、再生医療関連事業を展開するセルソース株式会社に就職し第二の人生を歩み始めた。



これまでのワールドカップで思い出残っている大会をお教えてください。


‘98年フランス大会と’02年の日韓大会、’14年ブラジル大会ですかね。
フランス大会は日本が初めてワールドカップに出たときで、当時は小学6年生。少年団に入りサッカーをしていたので、“ワールドカップがついに来たぞ“という思いで見ていました。
でも、そんなにすごいことだと思っていなかったしあんまりわかっていなかったかもしれないです(笑)

フランス大会に出るにあたって、その前にドーハの悲劇がありましたよね。ドーハの悲劇の時は小学校低学年くらいかと思いますが、覚えていますか?

リアルタイムでは覚えていないですけど、“センタリングからヘディングで得点を取られた“とかは様々なところで放送されていたので印象には残っていますね。
あと、フランス大会に進む過程のアジアの予選で、岡野さん(岡野雅行)のスライディングシュートが決まった翌日に、小学校でみんなとスライディングシュートの練習していたのは覚えています。

フランス大会が始まり思い出に残っている選手はいますか?

そうですね。小野伸二選手のデビュー戦が印象強いですかね。
正直なところ、初戦がアルゼンチンでバティ(ガブリエル・バティストゥータ)とオルテガ(アリエル・オルテガ)の印象がすごく強くて、たしかバティにチップキックかなんかで点とられているんですよね。

そうでしたね。2戦目のクロアチアでアルゼンチンほどではないですけど、結局負けちゃいましたよね。

ボバン(ズボニミール・ボバン)とスーケル(ダヴォール・シューケル)がすごかったですからね。
その時のユニフォームも持っていましたし、アルゼンチンのユニフォームも持っていました。この時代のユニフォームはすごく持っていてクローゼットに並べていましたね。

その他の日韓大会やブラジル大会で印象に残っていることはありますか?

日韓大会の稲さん(稲本潤一)の点を取った後のゴールパフォーマンスが印象に残っています。
小さい頃よりはワールドカップを身近に感じていたので興奮しましたね。フランスの時と比べて成績が良かったというのもあり余計ですね。



その後、プロになってブラジル大会は特に印象的ということですか?


そうですね。ブラジル大会のメンバー発表の瞬間がACLに行くバスの移動中でした。
バスの中のテレビでみんなと見ていて、嘉人さん(大久保嘉人)が後ろにいて「大久保嘉人」と呼ばれた瞬間「うわぁー」と盛り上がりました。
ただ、その一方で憲剛さん(中村憲剛)が選ばれなかったので、“セットで呼んでよ”“なぜ呼ばない”とみんな思っていましたね。
あの瞬間は一生に一度あるかないかぐらいの瞬間なので1番印象に残っています。

ACLに向かう移動中ということで発表前はどのような空気感でしたか?

成田空港に向かうところでみんなドキドキしていましたよ。“何時から?”とか言って、みんなでバスの前についていたテレビを見ながらドキドキでした。

実際大久保さんが選ばれて、憲剛さんは選ばれないとなった時の雰囲気はどうでしたか?

言葉にするのは難しいですね。僕らがどうこう言えるレベルではないので。 正直、僕はワールドカップを目指していた選手ではないですし、本人にしかわからないワールドカップに対する比重というか。前回のワールドカップから4年間でどれだけ憲剛さんがワールドカップに対する思いがあったのかとかも本人にしかわからないですが、計り知れないものがあったと思います。 その後に憲剛さんがブログで書いていましたけど、自分の中でどれだけ比重を置いていたかがわかったって言っていて、その後に等々力に帰ってきて「GO KENGO」という横断幕が出て、あれは本人にしかわからないものがそこにあったと思いますね。あの瞬間は歓喜とそうじゃない瞬間が混在していました。 日本代表という第一線で戦っている人にしか味わえないところなので、その瞬間は1観客でしかなく傍観者でしかなかったです。

直後ですもんね。
いい意味で代表に絡んでいなかった選手は他人事みたいな1ファンみたいな感覚ですか?

僕はずっとそのスタンスで見ていました。

憲剛さんは南アフリカ大会で選ばれて、その後のブラジル大会ですよね?

そうですね。南アフリカ大会では試合にそんなに出られていなくて、その4年後のワールドカップに向けてというところで年齢的にも1番いい時でしたしJリーグでも活躍していてのブラジル大会メンバーに選ばれなかったので計り知れないものが色々あったと思います。
だから大会よりこの瞬間というのが映像で覚えていますね。
空港着いて、憲剛さんが1人になろうとしていた風に見えたので、移動する時は憲剛さんに誰も近寄れなかったですね。記者ですら行けなかった気がします。

大久保さんには皆さんどのような感じでしたか?

逆に嘉人さんの場合は、速攻記者に囲まれていたのでそれどころではなかったです。
嘉人さんも当確という感じではなかったので、Jリーグで連続得点王狙っていて世間の一般論も“呼べよ呼べよ”と高まっていた時だったので余計覚えていますね。

代表クラスの選手がいるチームにいて、チームと代表での違いはありますか?

あるんじゃないですかね。僚太(大島僚太:川崎フロンターレ)は特にあったと思いますよ。
フロンターレの場合はやっていることが全然違いましたからね。だから逆にフロンターレでは出てくるボールが代表では出てこないとか。小林悠(川崎フロンターレ)も本人が感じるところですけど特にあったかもしれないですし、側から見ていてもあったと思いますね。今のところは憲剛さんとか僚太だったらボールが出ていたんじゃないかなと思いながら見ていました。フロンターレを見ていた人はみんなそう思っていたと思います。 世間一般的に”大島僚太が代表行くと活躍しない”とか言われますが、そういうところだと思います。
フロンターレで見ている人からしたら大島僚太はあんなもんじゃない。もっと凄い!となりますよね。大島僚太を普段から見て、知っているからこそ余計思った人も多いと思います。
やっぱりチームメイトが普段から練習しているのと、この期間だけ集まってチームを作らなきゃいけないというのは違いますからね。それが代表の宿命ではあると思いますけど、それが代表とチームの違いだと思います。



逆に海外の代表チームで印象に残っている選手やエピソードなどございますか?


「ジダンの頭突き」と「ベッカムの足掛け退場」と「バッジョのPK」は印象に残っています。
そういう事件的なものが多いですね(笑)

リアルタイムでは見てないですよね?

バッジョのプレー集みたいなDVDを持っていて、そこで見た気がします。
イタリアでいうファンタジスタの印象が強くて、映像でみてこの選手やばいなと思って、ワールドカップで見た時、こんな凄い選手なのに“PK外すんだ”と思いましたね。
あの後のバッジョの【PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持つ者だけだ】という言葉はずっと覚えています。

武岡さんはPK外したことはありますか?

大学四年生の時、天皇杯で外しましたね。今でもそのシーンは覚えています。 カシマスタジアムでリーグ連覇を目指す鹿島アントラーズと戦い、PK戦では前代未聞の0-3という負け方をしました。一本目で曽ヶ端さん(曽ヶ端準)がゴールの中に立った時“キーパーでか”と思って、5000人ぐらいの観客がいる中、鹿島側のゴールでやったのでゴールを見た時に“やばい”、これ外しそうだな”と思って一旦落ち着くためにゴールが小さく見えるから逆のゴールを見たんですよ。 そしたらちょうど鹿島のでかい選手達が並んでいて全然見えなかったので意味なくて、案の定いつも蹴る方向じゃない方に直前になって変えたら完全に止められましたね。 脱線しましたけど、 良かったこととかはあんまり覚えていなくて、ダメだったことの方がこう振り返った時に出てきます。ドーハの悲劇とかもそうですけど。この間のロシア大会のベルギー戦でのカウンターもこれからずっと言われ続けるんだろうなと思いますね。



今回のワールドカップで期待する選手はいますか?


正直フロンターレ勢が1人でも多くピッチに立って欲しいですね。
山根くん(山根視来:川崎フロンターレ)とかは一緒にやっていないですけど、フロンターレ勢となるとそういう見方をしてしまいますね。板倉(板倉滉:ボルシアMG)も碧(田中碧:フォルトゥナ・デュッセルドルフ)も高卒の時から見ているのであの辺は1人でも多くピッチに立って欲しいです。やはりシンプルにフロンターレ勢に期待したいです。

日本代表の予想をお願いします。

オリンピックでスペイン対日本の試合を見た時、差があるように感じました。ドイツも2大会連続でミスはしないと思うので難しいですね。でもグループリーグは突破してほしいです。
あとは1発目ですよね。初戦でどれだけ戦えるかだと思います。ドイツの方が手堅く、スペインの方がチャンスがあると思うのでどちらかで1勝してほしいです。
板倉がドイツで頑張っているので期待したいですね。

ありがとうございました。